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    花束を抱えて

  • 2008.10.04 Saturday
  • 昨日の夕刻、僕は待ち合わせ場所へ向かって街を歩いていました。

    その日は早い時間に様々なことを切り上げて職場を離れるつもりだったのですが、なんやかやと野暮用が押し寄せ、ちょっと時間的に間に合いそうにないと思い、待ち合わせ時間を一時間遅らせました。食事をする予定のレストランにも連絡して予約をずらしてもらい、少し余裕が出来たと思ったら意外にも用事が早く済んでしまい、ああこれだったら時間ずらさなくてもよかったなと思ったのですが、もう再度電話するのも面倒です。で、多少のゆとりを持ちつつ街を少しぶらついていたのです。

    待ち合わせ相手は、こう書くとなんだか恥ずかしいのですが妻です。結婚記念日でした。
    もう今さらアニバーサリーという年齢でもないのですが、我が家は二人暮らしで他に特にイベントめいたものはなく、毎年時間が許せばこの日くらいは一緒に食事でもしようということにしています。
    10月に入り少し秋めいてきた街を歩いていると、花屋が目に留まりました。
    街の花屋さんは、夜遅くまでたいてい開いています。繁華街ですとやはり夜の需要が多いのでしょう。お客さんも多く来店している様子です。若い着飾った女性が花束を求めています。誰に贈るのだろうな。また結構年配の男性のお客さんも居ます。僕はぼんやりとその様子を眺めていました。
    僕はよくブログ内で書いていることですが、性格に潤いが無く花を愛でる心というものがあまりありません。花より団子を地でいく人生なのですけれども、そのときは普段全く縁がないはずの花屋さんにふらふらと入り込んでしまいました。ここ数年、花屋さんに入った記憶など無いのですけれども。

    僕は、花を人に贈った経験というものが過去にあったっけ、とその時思い返していました。
    仕事でお祝い等の生花を贈ったことはそりゃ何度もあります。ですがそれは僕が手配したというだけのことで、会社がやったことです。また、冠婚葬祭などで花を贈ったことは何度もあるはずですが、たいていは連名であったり、または団体名であって、個人的に、ということは今まで無かったかもしれません。記憶が曖昧であるのは、いずれの場合も注文して配送して貰うようにしたためで、自分で花束を抱えて届けに行く、という経験が皆無であるからでしょう。石田純一氏のようなことは不調法であり残念ながらやったことがないのです。
    電話一本で事がすむ、という便利な世の中です。僕の場合、結局自分が贈った花を見ないで終わる事がほとんどです。味気ないものですね。そういうことも含めて思い返せば、僕は一度だけ個人的に花束を女性に贈ったことがありました。それは、今の妻にでした。

    昔のこと。後に妻になる女性は関東に住んでいて、職場の寮で暮らしていました。今のように携帯も無くメールなども全く一般的で無かった時代。電話すら呼び出しであり、基本的には向こうから掛かってくるのを待つだけで、あとは手紙。牧歌的な時代だったと思います。遠距離であり簡単に逢うことも出来ません。そんな関係においてよく結婚までしようと思ったなと今になって思いますけれども、知り合って5年が経ち、なんとなしに結婚が決まり、彼女が勤めていた会社を退職することになりました。
    その日付だけは聞かされていましたが、特に僕は何もしていませんでした。結納、引越し、挨拶、結婚式の準備等の決まったスケジュールの中のひとつの流れの中のことと認識していましたし、僕も当時は非常に忙しくてプライベートのことになかなか頭が回らなかったということもあります。しかし、その当日になって、高校卒業後彼女が一人で田舎から都会へ出てきて、長く勤めた職場を離れるということの重大さに気が付きました。遅い。手紙のひとつでも書けば良かった。けれどももうその当日です。
    僕はその時「花キューピット」というものの存在に気が付きました。電話をしてみますと当日でも大丈夫とのこと。花が大好きな彼女に、せめて気持ちだけでも贈ろう。僕は合間に花屋さんに行って手配をしました。花なんてガラではありませんが、彼女の10年間にお疲れ様、との思いを込めて。
     
    夜になって電話がかかってきました。
    「嬉しかった。ありがと。」
    喜んでくれたようです。まさか僕から花が届くなんて思ってもいなかったとのこと。普段僕の言動や性格を良く知る彼女からすれば予想外でしょう。まあたまにはそういうこともするんだよ。当日思いついたこととは言わず、その日は夜が更けても長電話が続きました。

    さて、花屋にて。
    結婚して後はもちろん、花束など贈ったことはありません。一緒に暮らしているのに花を贈るなんてことは照れくさくて出来るものではありませんし、また他の女性に花など贈ったら張り飛ばされてしまいます。そして15年もの間、義理を除いては無縁だった花屋です。
    僕は、その日にプレゼントしようと思っていた、一年越しのアメジストのアクセサリーが既に鞄の中にありました。でもまあ、花もあってもいいかな。
    ちょっとした思いつきと言いますか、いたずら心のようなものですが、これを抱えて待ち合わせに現れたならどんな顔をするだろうか。それが見たいという気持ちもありました。
    「黄色い花を選んで下さい。相手が好きなんで。ああそんな感じでいいです」
    そして僕は待ち合わせの場所に向かいました。

    妻はもう来ていました。僕は後ろから近づいたのですが、人の気配がしたのか振り向きました。そこには、あれから15年経ってずいぶんくたびれた中年のおっさんが花束を抱えて歩いてきます。はたしてどう思うでしょうか。

    「花買うてきてしもたわ。たまにはええかと思てな」

    「あら…えへへへ…」

    なんだかハニカんだような顔をして妻が笑います。そうか、花を貰ったらこういう顔をするのか。昔、この人に花を贈ったときは、電話だけで顔を見ていなかったからなあ。
    決して平穏なことばかりの結婚生活でもなく、いろんなことがありました。でも、よくこんな偏屈な男と離れずに付いてきてくれたものだと思います。本当は感謝しているんだ。あんたと一緒に暮らせて心から良かったと思っているよ。
    そんなことはとても口に出して言えることではありませんが、これからもよろしく。

    「ほな美味いもん食べに行こか」
    「うん」

    そんな15回目の結婚記念日でした。



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    | 2008/10/04 | 随感 | 10:35 | comments(8) | trackbacks(0) |

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  • 2016.12.30 Friday
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    | 2016/12/30 | - | 10:35 | - | - |

    コメント
    素敵な記念日でしたね♪

    幸せな話を聞くとすぐに『おのろけか』とか…中には陰口をたたく人もいたりしますが…

    私は幸せな話を読んだり聞いたりするのが大好き♪

    だって私に幸せのおすそ分けしてもらえた気分になるから。

    くたびれた中年のおっさん(失礼…同年代なのに)が抱えた黄色い花束をうれしそうに受け取る姿

    くたびれた中年のおっさん(何度も言うなって?)だから素敵なんですよ。

    光景が浮かんで来るようです。


    波風あり…の2人だからこそ、記念日の花束は価値があるんですよね。

    素敵なお話をありがとう♪

    お二人の珍道中(またまた失礼)楽しみにしています。

    記念日を大切に出来る人はステキです♪
    結婚記念日
    おめでとうございます。

    ちなみに私たちの今年の記念日はメール一通。

    忘れてない…だけ
    ありがとうと書かれていた…だけ
    おもしろかった…と書かれていた…だけ

    よし…としました。(笑)

    記念日の数のピンクのバラはあと何年後に届くやら…(爆)
    >アラレさん
    どうもありがとうございます。
    うん…まあのろけに見えるかもしれませんね。この記事だけを見ますと。
    でも、当方そんなつもりもなくて、どちらかと言えば街角の中年夫婦の様子をちょっと切り取って描写してみたいという意識の方が強かったかな。主観を客観的に書きたいということで、こういうのがHNで書くブログの楽しみ。光景が浮かんでくるとおっしゃっていただいて本当に嬉しいです。ありがとう。
    中身は、もちろんHNでしか書けない話ですな。凛太郎だから出来ることです。はい、臆面も無く幸せですよ(笑)。

    アラレさんちの「メール一通」も含蓄がありますね。「ありがとう」「おもしろかった」…これだけで短編小説になり得ますね。とても素敵な世界だと思います。「まあよしとしてやるか」と心に笑顔を残しつつ澄ました表情はそのままで携帯をパタンと閉じた…。なんだか歩んできた歴史がその一言に凝縮されているようでこれもまた琴線に触れる話ではありますね。
    凛太郎さん
    中身はオヤジの私も、ひとつだけ、人並みに女だなぁと思うのは、花が好きなことです。別に、男性でも花が好きな人はいっぱいいますけど。
    なぜか、女はやっぱり花が好きだと思う。
    花というか、花を贈られるのが好き。
    何よりうれしい気がする。手紙も嬉しいけど、ちょっと照れもあったりして。
    花キューピットと言えば、昔、茶犬と遠恋だった頃、誕生日に下宿に花キューピットで送ったなぁ…。
    お金がなくて、高いのは無理なので、でも、抱えるくらい大きいのを贈りたくて、「ストック」、という安い花を、白のみで大きくしてください、とお願いした。
    ずいぶん経って、下宿に行った時、ごみ箱代わりにしてた、高さ50センチ、直径20センチくらいの筒に、ドライフラワー化したストックの花束が差し込まれていました。なんか、嬉しかった。
    どうして、あんな気持ちに、今はなれないのかな…。
    なんだか、今日の凛太郎さんの綴りに、反省してしまった(痛)。
    • 2008/10/06 10:53 PM
    >よぴちさん
    女性は花が好き。僕も別に統計を知っているわけではありませんけれども、経験上そう感じますね。美しさに鋭敏なのかな。感性が豊かであるとも言えるかもしれません。うちの配偶者も例外ではなくそのようです。しかし僕は15年間も花を彼女に贈っていなかったのですな。これは反省なのでしょうね。けど、なかなか出来ませんよこういうことは。僕なら手紙の方がよっぽど照れませんがね(汗)。

    よぴちさんの話もまたいいですね。ストックの花束を遠く離れた彼に心を込めて贈り、そしてそれを彼がドライフラワーのようにしてさりげなく飾り続ける。0・ヘンリーの小説みたいですね。「どうして、あんな気持ちに…」のくだりも万感の想いが感ぜられて素敵だと思います。
    こんばんは
    結婚15周年おめでとうございます。
    花束のプレゼントは女性にはとてもうれしいものです。
    特に大好きな人からもらう花は特別ですね。

    「君に読む物語」「黄昏」という映画のように、年をとってもいい夫婦でありたいですね。

    これからも二人でたくさんの思い出を作ってください。
    >ninngennmodokiさん
    ありがとうございます。花束とは実にガラにもない話ではございますが(汗)。
    ヘンリーフォンダとキャサリンヘップバーンには程遠いキャラではありますが、そんな夢もみてもいいのかなとふと思ったりもします。
    凛太郎さん かっこいい。

    結婚記念日♪ おめでとうございます。
    お花を手にされて 奥さま嬉しかったでしょね。
    いい日になりましたね☆

    う〜ん…わたし 彼からはないなあ。
    あ。
    彼がただ一度 花束抱えて歩いて行くの 見送ったことあった。

    その日は 彼のおかあさんのお誕生日でした。
    花束どころかプレゼントも それまでしたことなかった。
    彼はその日 結婚すること決めて それ言いに行ったのでした。
    生まれて初めての息子からのお誕生日祝いの花束。
    大事な息子 まだ結婚するなんておもいもしなかったのに。
    その発表へのくじけそな気持ち 花に励ましてもらおとした息子。
    あの花束は嬉しかったかなあ 疑問ですw
    >まるちゃん
    ありがとうございます。
    まあ…いい日だったのじゃないかと思いますよ。少なくとも僕はね(笑)。

    なるほどまるちゃんにもそういうお話が。
    >その日結婚すること決めて
    まるちゃんにとっても特別な日でしたね、それは。
    花が後押ししてくれることもあるのだなあ。
    自分を振り返ると、相手のご両親に会いに行くときはそりゃ緊張しましたけど、自分の親にどう言ったのかは全く記憶にない。適当な親子関係だったなと(汗)。
    息子の母と娘の父とどちらが愛情が強いのかはわかりませんけど、やっぱり強い思いはあるのかな。花束を抱えた息子を見たおかあさんは、多分何を言いに来たのか分かったかもしれませんね。そんな親子関係もまたかっこいい。
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